Eno.373 シア

■ 夏の裏側 ③

【御曹院大病院で受け入れ可能です。】

その言葉を頼りに、ストレッチャーに乗せられ飛行機に搭乗するシアと、
一緒に乗り込む担当医師、そして保護者含む付き添い二人。


「………」

一番深刻な顔をしている保護者。姓は馬、名は敬。直接の血縁関係は無し。
取り調べを受けていたスラムの子達と、シアが最近よくつるんでいるのは知っていた。

『そんな顔してたらシアの具合まで悪くなるぞ。これでも読め。』

付き添いの警察官。姓は劉、名は洋。敬とは古い付き合い。


「地球の歩き方、イバラシティ……観光ガイドじゃないですか、これ。」

投げ返そうとして、やめる。冗談でこういう事をする人ではない。


『治った後の事だけ、考えろ。 治ってから帰国まで、退屈させずにしっかり連れ回してやれ。』




「そう……だな。シア、どこか行きたいところあるか?」