■ 無題
桜古宮 葉銀。
彼は生還を果たした。
あるべき世、あるべき場所へと戻り。
安堵した店長から提供されたお祝いのケーキ達を食べきって倒れ込んで。
それはもう幸せそうに。
極限を体験した。最も死を身近に感じた。
多くの未知と出会って、知って、別れた。
経験と思い出を持ち帰った。
目覚めたら色々な話をしよう。そう考えながら眠りにおちた。
その先は綴られないものの…
綴られずとも、続く。
―――――――
…同時期・どこかにて
「…うむ」
「どしたんですかボス」
「長(おさ)だが?」
「うわぁなんか言い表しがたい迫力」
「こほん。…縁の残滓を辿り、もし死してしまうくらいならば…我らが出て救うが…というところにあったが…」
「なんとかなったようだ。よいことだ」
「なにもわかりません」
「めでたしめでたし、ということだ」
「めでたし。」
―――――――
「…代償が、あるべき世との縁の断絶…再び戻れる見込み無き別れでは、そう易々と動くわけにもいくまい」
「『桜古宮』。散りし我らが同胞よ。その名を継ぎし者の末裔よ。その名が正しく継がれ、縁と力が届く世ならば、我らはひとたび助けとなろう」
「その名に込められた想いのために」
『同胞よ。もし届くことがあれば、どうか助けとなって――…』
「あるべき世との縁が安定している状態であればな…即時解決したのだが…うむ」
「こういうとき、こう言うのだろうな。残機を消費せずに済んでお得」
―――――――