Eno.43 仁岩 うづき

■ やっぱり3日坊主になっちゃったかも

「もう、この島ともお別れか〜……」



ぽつりと言葉をこぼし、今まで生活してきた遭難先を振り返って見る。

……結局、ここは現実だったのかな。
もしかしたら、いつもの部屋でずっと長い夢を見ているだけで、今までのはずっと……
…………

……最初は、ただ帰りたいだけだった。
無人島なんて、クーラーもアイスも無いし虫もたくさんいるだろうし。
そんなとこに流されて呆然としてたなぁ。


だけど、そこはただの“無人”島なんかじゃなくて
面白くて楽しい人たちが居たんだよね〜。

ときひささん。
最初はミステリアスな人だな〜って思ってた。けど、本当は穏やかでノリも良い楽しい人だったんだよね〜。あの人が作った小屋……お城?もすごい出来だったな〜。しかもあの出来で何個も建ててたよね。困ってた時にお水やお魚をくれたんだ。あの時のお礼、できてたかなぁ。
……そういえば何歳くらいだったんだろ?多分僕よりずっと年上だよね。

クラーレさん
かっこいい人だなぁって印象があった。格好とかも軍人さん?ぽくてお堅い人だと思ったんだ〜。
……ノルマンディー諸島、て言う名前をつけた時に、面白い人だってわかったんだけどね〜。クラーレさんは独特の……他の人には無いセンスがあるな〜って思ったなぁ。とっても面白くて、けど、やっぱりかっこいい人。
……アンデッド?らしいけど、それも関係ない大切な仲間の1人、だと思ってる。

ミトリムシくん。
よく死んだお魚を見ていたなぁ。
多分、名前の通りに看取っていたんだろうな〜。クラゲだからどうやって意思疎通するんだろう、と思ったけど辿々しくも喋れてるの見て可愛いなぁ〜、って思ったんだ。
……パーティーの最後、見失っちゃったけど、どこにいっちゃったんだろう。また会いたいな。

ラブちゃん。
ヒトデ人間……って言ってたけど、一体どんな生き物なんだろう。少なくとも今まで見たことはない気がする。
メガホン2つ拾った時に、1個渡したらヒトデくれたんだよね〜。あのヒトデ、綺麗だったな〜。……どうやって、部屋に飾ろうかな?
ラブちゃんの撮ってくれた写真とっても可愛かったな〜。見るだけでほんわかしてくるようなラブちゃんの雰囲気を感じされる写真だったな〜。
いつも楽しそうでいるだけでこっちが癒される子だったな〜。海でも元気でいると良いな。

カラカくん。
見た目はかなり人間なのに手に羽が生えてる……って印象が強かったなぁ……あの羽、何の鳥の羽だろつ?
本人はふわふわしてる子で、いつも島のみんなのために資材や食料を分けたりしている優しい子だったなぁ。
鳥なのに焼き鳥食べてる時はちょっと流石にびっくりしたけど、まぁカラカくんが美味しく食べてるだったら良いんだろうな〜。
写真最初に撮ったの、カラカくんだったよね。あの写真、ほんとによく撮れてたなぁ。
あの子には、色々お世話になっちゃったなぁ。かなり年下だろうに、大人びている子だったなぁ。

フェリアちゃん。
多分海外の子だよね?けど日本語も外国語も上手だったな〜。
フェリアちゃんとは色んなことを一緒にやったんだよね。石像作ったり、砂の城作ったり。
……砂の城、本来の僕は多分あそこまで真剣にやらなかっただろうけど……フェリアちゃんが手伝ってくれたから無事に立派なのが完成したんだよね〜。ふふ、あの時は嬉しかったな〜。
あの子が一番最初にパーティーしよーって言ってたんだよね。フェリアちゃんのおかげでみんなが楽しい時間を過ごすことができたんだなぁ。

トーリちゃん。
……今も不思議なんだけど、あの目隠しをつけた状態でどうやって生活できてるんだろう。音や気配で何とかしてたっぽいけど……あの才能、スイカ割りよりも向いてるものありそうだな〜……
けど、目隠しがありながらも島の生活を楽しそうに過ごしてるのをよく見かけたな〜。
表情が見えずらいけど、なんだろう……楽しさが伝わってくるんだよね〜。トーリちゃんの明るい性格が理由かな?

リーフェちゃん。
なんとこの島、鳥人間さんが2人もいる。なんかすごいな〜。
リーフェちゃんは仕立て屋さんの女の子、だっけ。結構年下なんだろうけどしっかりしててすごいな〜。
リーフェちゃんは、僕含めた島のみんなの服を作ってくれたんだよね〜。みんなの分作るの大変だろうに、それぞれ個性がある服ですごいんだ。僕のは冷感素材のワカメ柄の服。……帰っても愛用したいな、部屋に着る服として〜。
写真、あの子が一番撮ってたな〜。あの子の写真は島のみんなの元気さをよく捉えていたなぁ。仕立て屋だけじゃなくて良いカメラマンにもなれそうかも。


他にも色んな人がいたよね。女子高校生ぐらいの子とか、丸い和菓子とかあと何故か目につく流れ着いてた物の一部……なんだかすごい無人島だったな〜。

……とても、楽しかったな。




……ここだから、きっと楽しかったんだと思う。昔見たパーティーの夢みたいに、すごく賑やかで、暖かい場所だった。
……離れ離れになっちゃうのは正直寂しい。また会えるかなんて、それこそもう一度漂流するぐらいじゃないと難しいと思う。
けど、それでも。

「……ここで、ずっとお別れではないよね。
 ……だって、この楽しさが一回きりなんてもったいないよ〜」



だから、今は笑ってお別れしよう。……また、会えるからね。
みんながくれた思い出の品は絶対無くさない。このことが本当のことだって思いたいから。

「……」



振り返った先に広がる島を目に焼き付けるようにじっくり見る。蒼い海。白い砂浜。赤い太陽。緑色の森林。灰色の岩場。……色とりどりの拠点。
……僕が建てた石像が光って見えた。

僕は振り返るのをやめて、まっすぐ船の方へ歩き出した。どうやって帰るかは決まってないけど、どうにかするしかないや。


……


さようなら、思い出の島。
沈んでしまっても、きっと忘れられないよ。


────


「…………ふわ……」

ぼや、と視界が滲んだ感覚がして目を開ける。重たい眼を開くと、いつも見ている天井が広がっていた。
ふわふわのベッド、ほどよく効いた冷房、家具が少ないせいで広く感じる部屋。
……うん、僕の部屋だ。
何で今更僕の部屋の確認をしてるかわからないけど、何だか確認したくなったのかも。

「……なんか、すごい夢を見てた気気がするなぁ……」

なんだかふわふわしている。久しぶりに最高の快適さを感じているような気もする。
……そして、なんだか胸に穴が空いたような感じも。

「……歯、磨きにいこ……」

ベッドに伸びてた足を下ろして、洗面台に向かおうとした。

…時に。


カラン…

足元に何か当たった。

「……?」

何かと思って覗き込んだら、
名前の入った傘、ペットボトルに入ったお水、不思議な柄の洋服、容器に入ったヒトデ。
……そして、″みんな″で撮った写真。


「…………」



「……夢じゃ、ないや!」







・現時点での資材

みんなとの思い出  たくさん!