Eno.127 苺坂みるく

■ 未来のおはなし

ここから先は
すこしだけ未来のお話です。


───あれから私は
住み慣れた街に戻ってきました。

友人には連絡がつかなかったことを訝しがられましたが
「その期間は住み込みバイトをしていて、
電波が届きづらいところにいた」と言ったら
なんとなく納得してもらえたようです。
(顔や腕がすこし日焼けしていたことで説得力があった様子!)

夏休み期間中であったこと。
帰省を考えて
本来のバイトをしばしお休みしていたことが
幸いといえば幸いでした。





こうして夜、空を仰いでみても
薄くけぶったような暗闇には
ぽつぽつとした頼りない星あかりしか見えません。

あの星空も。
あの風も。
出逢えたことすらも、夢だったみたいです。


だけど。

お気に入りのスマホケースに入れた紙片と
おへやのあひるちゃんクッションと
…約束が、あるから。

だから私は連絡を待ち続けます。
もしかしたら簡単にはゆかないかもしれなくたって
ずっと、ずっと。



「……あ。スマホ、鳴ってる?」



▷苺坂みるくこと山田春香
▷シマから脱出ED