Eno.155 Иван А. Гладский

■ 無題

船に乗り込んでからは、ずっと甲板で島を眺めていた。
彼ら、並びに島そのものへの名残惜しさ、この先に対する不安……いろいろなものがない交ぜになった中で、誰に何を話しかけることもできていない。

オウスケ、アル、アイダル、アキノキ、クキサワ、ヒデキ、レイ。名前を知っている連中は皆既に乗船したようだ。他の連中も……おそらく僕が気付いていないだけだろう。そう信じている。
本当に、彼らにはいろいろな意味で世話になった。きっと僕一人ではあの環境で生き延びることなどかなわなかったはずだ。

この船はどこへ向かい、そしてそれぞれどのような日常へ帰還するだろうか。
気にならなかったといえば嘘にはなるが、それを知っておく必要もないものと判断して振り払った。
住む世界が違う、属するコミュニティが違う。そんな程度の差など、漂流してしまえば何の意味もなさない。
あの場所で育まれた差別意識もまた同様だった。それぞれにいかなる背景や事情があろうとも、その意志さえひとまとめにできるなら共存はできるはずだと。


総じて、悪くない漂流だったと言えるだろう。

さて、この先僕はどうしようか。