Eno.166 佐藤羽理生

■ 夢の終わり

本当に夢みたいだった。

無人島、星が綺麗に瞬いていて、それを背景に、キメキメのロリータ服の女性が目の前に現れた時は、そう思った。

そして、彼女は口を開いて、僕の名前を呼んだんだ。





そもそもこの7日間が夢みたいだった。
浜辺から流されて、何もなくて、持ってたのは、飲みかけの水と、財布と、眼鏡。
殆ど役に立たなかった。
6日間ずっとこの島を彷徨って、とうとう7日目に、あの人……『ハルカさん』と会えた。

『ハルカさん』は屈強な男性ではなく、ロリータ服のきれいな女性だった。
好きなものがあって、島に負けたくないからその服を着ているって教えてくれた。
そうして、僕に、夢みたいな光景を見せてくれたんだ。
ただ、「カッコつけ」のために手芸部をあきらめた僕に。

朝、またキメキメのロリータファッションで、ハルカさんはご飯を食べていた。
かわいいが、やっぱりまだ、夢みたいだ。

ご飯を食べていたら、建設したSOSのせいか、浜辺で焚き火をしていたせいか、船が通りかかって、ぼくらを助けてくれることになった。

このまま船に乗って、僕は日本に帰る、のだけど。

夢みたいな島。夢みたいな7日間。夢みたいな、ハルカさん。
もし日本に帰って、僕は……、夢だったのかなって、思ってしまいそうで、それは嫌だなと思った。

僕は、夢にしたくない。