Eno.178 未開人(仮)

■ 「うー!!」

未開人はシマがなくなることを知った。

未開人に言葉があれば、残念とかさみしいと表現しただろう。

未開人はこのシマで多くを学び、楽しく過ごしたからだ。


未開人はほかにもシマがたくさんあることを知った。

未開人に言葉があれば、たのしみだと表現しただろう。

未開人はこのシマですてきな人々と出会ったからだ。


未開人は次のシマをめざすことに決めた。

未開人は船の操り方を学び、作り方を学んだ。

未開人の船は頼りないが、次のシマにはきっとたどりつけるだろう。


未開人は次の、その次の、もっと先のシマをめざすことに決めた。

未開人はそうしていずれ、未開人ではないなにものかになるのだろう。


未開人はこうして、大海原に帆を揚げた。

未開人の行きつく先がどこになるのか。いまはまだ、だれにもわからない。