Eno.205 砂介仁

■ 無題








7日間。
長いようで、短いサバイバルは無事に幕を閉じた。

現代社会では得られなかった体験をしたり。
忘れていた感覚や感情を取り戻したり。
人との触れ合いも悪くないなと感じたり。
…天使に、恋をしたり。

色々あった。色々ありすぎて未だに現実感が薄い。
とはいえ、こうして五体満足で帰れることになり、
ひとまずは安心といったところだ。

これからしばらくは船旅になる。
どれほどの時間がかかるかは、わからないけれど。
ただ、あと少し、もう少しだけ、
苦楽を共にした友人達との時間が続くことが
嬉しいと感じる自分がいた。
ひとりだけ、欠けてしまった彼(あるいは彼女)のことは
未だに気がかりではあるが……。

各々が日常へと帰っても、
いつかまた、どこかで会えるといいと、心の底から思う。
生きることに必死で、ほとんど彼女らについて知らないままだ。
今度はゆっくりお茶でも飲みながら、
ここでの生活を笑いあって話せたのなら、それはきっと幸せな事だろう。

……その頃には、君はもう少し
人間についての理解が深まっているだろうか。
俺が伝えた言葉の意味を、考えてくれるだろうか。

なんて。そんないつかへの希望を持って、生きてゆこうなどと考えている。
まあ、でも。とりあえずは―――


「……帰ったら退職届書くかぁ」