Eno.216 真月姫 瑠璃子

■ 『さいごの便箋』

──砂浜に残されたひとつのボトルメッセージ。
中身は『さいしょの便箋』と。
違う筆跡で書き足された続きのメッセージ。

"いつか、此処に流れ着いた貴方様へ"


"この便箋を目にされた、今。
苦難の真っただ中にいらっしゃるかもしれません"


"それでもどうか諦めないで。
ひとを。自分を。そして世界を。諦めないでください"


"ここには、異なる世界に住まう方々が流れ着きます。
思いもよらぬほど親切な方が、いらっしゃるやもしれません。
どうか、最初から忌避せずに。勇気をもって、心を開いてください。
その試みは、決して無駄にはなりません"


"心優しいロボット。美しい羽根の少女。やんごとなきお嬢様。
異国のアイドルとプロデューサー。料理上手なシスター。血染めの紳士。
お花の妖精。伝説の女武者。サメの血を受け継ぐ勇敢な少女。
わたくしを支え、救ってくれた。心強い異界の皆様です。
どうか、貴女様にも素敵なご縁がありますように。心からお祈り申し上げます"


"この島を生き抜いた貴方様は自由です。
世界の垣根を飛び越えて。どこへでも行ける。
どうか、自分の行く末を諦めないでください"


"わたくしは、この島に流れ着いて。幸せでした"


"かつて、この『シマ』を生きた者より"


島と共に海底に沈むボトルメール。
水面からの微かな光を浴びて。
同封された万年筆が、瑠璃色に輝いでいる。







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"それ"は物心つく前から視えていて。
揺蕩う霊の合間から、ずっとこちらを見つめていた。

お父様。お母様。
血族の期待を背負い。
もって生まれた呪をふるう。

誰かの恨み、誰かの殺意を飲み込んで。
尊き誰かの命を祟る。
それだけがわたくしの存在理由。

すべてを終わりにしよう。


10:08:42

差し伸べられた"それ"の手をとった―














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■■■公安特殊超常対策本部:機密文書■■■

■怪異指定番号:K-216-N

■脅威階級:無力化 (元 特級禁忌指定)

■現象詳細:
洪水と共に顕現する大型豪華客船。
洪水被災者を避難ボートにより船内に受け入れる様子が目撃されているも、船体からの帰還者は確認できていない。
洪水被災地の浸水は引くことなく海面は上昇を続け、豪華客船の活動範囲を広げていることから、洪水は怪異現象の一部である可能性が高い。
洪水頻度と浸水速度から、■月後には国内面積の■■%が海面下に沈むと試算されている。

[更新]
■■■■年■月。
浸水面積の減少を確認。
海面高さが怪異発生以前の水準に回復した。
内陸に取り残された豪華客船の内部調査が開始される。

出港時の乗客 2249名
船内従業員 120名
洪水被災者 18456名
計20825名の遺体が発見された。

[被災者の遺留品であるボイスレコーダーに、
船内の様子がわずかながらに記録されている]

『―――
 だれでもいい 頼む
 はやく はやくあいつをとめてくれ

 おわらないんだ
 なんども なんどもなんどもなんども
 
 22時8分
 ああ また夜がくる
 また殺される

 もういやだ
 はやく あいつを

 瑠璃子をとめてくれ―――』


出港時の乗客 真月姫 瑠璃子の姿は依然として発見されていない。






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□IBARA PRIME□
『瑠璃色忌譚:血を吸う幽霊船(後編)』

ジャンル:邦画、ホラー、サスペンス
年齢指定:R15
放映時間:95分

■トップレビュー
NON-NON 2022/8/20

★☆☆☆☆

端的にクソ。

前編は瑠璃子の闇堕ち回で、いわば悪役誕生譚だったのに、
その続編で瑠璃子が一度も出てこないとか、なにがしたいの?
メインキャラ交代にしても雑すぎ。新キャラ魅力なさすぎ。

せめて幽霊船が無力化した理由とか過程とかは説明してほしかった。
次回作で回収予定なのかもしれないけど、もう追っかける気もおきない。

瑠璃色シリーズはこれまでも突っ込みどころ多かったけど、
キャラと演者の魅力でギリギリもってた。
その唯一の利点すら放棄したこの映画は、邦画の悪いところを煮詰めた特級呪物。
ある意味ホラーか?

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