Eno.296 ジェオルドム

■ 帰還

謎の手紙の通り、船が島へやってきました。
我々は助かったのです。

しかし、船員殿が気になることを仰っていました。「この船は世界を渡れる特別製」だと。

この島は、私の生まれ育ったあの大陸の存在する世界では、ない……?

私(とエリオット殿、マーチヘア殿)は、故郷の大陸を離れ冒険者を続けている身。
故郷の大陸によって冒険者家業は禁止されてしまい、冒険者をやめるか、大陸を離れるかの二択を迫られ、後者を選んだのです。

いつか冒険者を引退すれば、故郷の大陸へ帰れるのだと思っていました。しかし、まさか、このままでは、私は故郷の大陸へ帰れない……?

今なら、帰れるのかもしれない。
冒険者をやめれば、故郷へ。

否。愚問でした。
私はそもそも故郷のドワーフの村、ダングラムを捨てて冒険者となったのです。
冒険者をやめたとて、故郷の大陸に居場所など元よりありませぬ。

それに、この島での出会いは幸せなものでした。
エリオット殿との再会に限らず、恐竜たち、人魚殿、巨人殿、博士殿、バリカタ一郎殿、酒場のマスター殿、シオマネキ殿、ジェニー殿、ヨウキ殿、ミライ殿、セラ殿、鳥殿……会話を交わしたのは以上の方々でしょうか。他にもいたかもしれませんが失念してしまいました。いずれにせよ、善き方々と巡り合えたこと、神に感謝します。

だから冒険者はやめられないのです。

さて、私はどこの「世界」へ送り届けてもらいましょうか?