Eno.310 エーファ=ターネンベルク

■ 依頼終了に関する資料集

●『Iriza Aventurojによる最終報告書』

第三版となる依頼完了報告書となります。
今回の追加情報を以てあの海域における謎は完全に解明されたため、
今回が最後の版となるでしょう。これを以て依頼は完全に終了となります。

まず結論として2つの要因により行方不明者が多発する自体となったと考えられます。

1.あの海域は世界と世界を隔てる壁が極端に薄くなっており、
  ちょっとした魔術知識があれば別の世界へ"繋がる"ことが容易であったこと。

2.他の異世界の海と"接続"する現象を持つ異世界『ジーランティス』の存在。

1.の結果として壁が薄いあの空間は頻繁に異世界とつながっていると考えられます。
そして2.で述べた世界の普遍的な現象として異世界の海と繋がる性質を持つ
ジーランティスがこちらの世界と繋がろうとした結果、
あの海域に集中してつながってしまっていた、と考えられるでしょう。


ジーランティスの存在はポータルに巻き込まれたこちらの冒険者の手記
並びにその冒険者を保護した"船"とその船員からの情報収集によるもので、
後に"船"の船員に協力を依頼して行われた
使い魔での遠隔調査でも実在は確認できています。
賢者の塔からの人員の立ち会いも行っているので、
そちらからの報告も併せてご確認ください。

遭難事故の対策としてはあの海域を閉鎖する以外にないと思います。
一応、薄くなっている異世界との壁を厚くする方法はありますが、
消費される魔力を考えると現実的ではありません。
船乗り全体にあの海域には近づかないことを提案するしか無いでしょう。
幸いジーランティスは海にしかポータルを作りません。
例えば飛行船などを使う場合は気にしなくてもいいでしょう。

また、遭難事故以外の観点からもあの海域に人を近づけるべきではないでしょう。
ジーランティスが積極的に関わって来ているだけで、
あの海域はあらゆる世界と容易に繋がることができます。
異界を研究している魔術師からは魅力的な場所にみえるでしょう。
世界の壁そのものに影響を及ぼす研究をする者が現れるかもしれません。
しかし万一失敗すれば他の世界との隔たりが完全に消え失せ、
今以上の混沌とした世界になる可能性があります。
そうなれば、最悪人類は滅亡するでしょう。
そうでなくとも、異界には危険なナニカがいると、
ジーランティスに言った冒険者が報告してます。
強固な管理・警備耐性を敷くことを提案します。


最後に、
これまでの遭難者の内数名の遺品を"船"から回収できました。
当事者にはお返ししています。

私達の世界におけるジーランティスからの生還者は
こちらの冒険者「エーファ=ターネンベルク」が初めてのようです。

そして、これが最後の生還者になることを願います。
今後、このような海難事故が起きないように、整備を願います。


Iriza Aventuroj コリーン=メイジ


●『エーファ=ターネンベルクの手記・最終ページ』

~エーファ=ターネンベルクによるジーランティス滞在中の手記は~
~賢者の塔の研究者によって回収されジーランティスの資料として保管されている~
~これはジーランティス研究の役に立たないと回収されなかった唯一のページである~


船が見えた。
みんなも砂浜に集まってきているようだ。
自己紹介したり、意外な正体をお披露目したり、
なんだか生きるために色々してた頃よりもイキイキしている。

この極限の状態から解放されたためだろうか?

あの娘

ウツミ、『内海』って書くのかな。(※普段は使われない「漢字」が使われている※)
あの娘も。ここに居てほしかったな。


そして、できれば、あの感情無きナニカも。

アレは、僕に優しくしたこともあった。
それもまた興味深いから、だけだったんだろうけど。

気まぐれに何をするかわからない。
そんな性質がなければ、きっと人とも生きていけただろうに。

でも、これは予感でしかないけど。
あのナニカはきっと生きてる。
船を使わずとも自分の世界に戻れる手段を持ってるんじゃないかな。


これまで手記に書いてきた通り、
この島は過酷だ。

だけど死人が出たのは、間違いなく人災だった。

僕の選択ミス
あのナニカの悪意ですらない気まぐれ
内海さんの無知

でも同時に、色んな人が協力の姿勢も見せていた。
旅する蟹さんや、ダンボールの人、なんか赤い三角の人。
いやこれ人じゃないなえーっと生命体?
とにかく協力する人が居たから、生き残れた。

もし、僕らの報告でこの海域の処遇が決まるのなら
恒久的な封鎖を望む。

生還者が、遭難者が、僕で最後になることを望む。


それでももし遭難する人が出てしまったら。

まず、人と話してみよう。
それが生き残る、第一歩になるはずだから。