Eno.348 キダム

■ 無題

船に足を踏み入れた瞬間、すべてを思い出した。
ああ、そうか、俺はあの日、命からがら海に飛び込んで……。

死ぬつもりは毛頭なかったが、生き延びたのは幸運だった。
皆で揃いの服を着て、ふぃあ――に似たメンバーとも合流できた。

あの島に、思い残すことはない。

俺は今一度、「世のため人のためのお仕事」に戻るとしよう。



Salut!



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キダム Quidam



とある宮廷に仕え、暗躍する密偵。
その名は「通りすがりの名もなき人」「取るに足らない人間」を意味する。

変装の達人で、演技力に長ける。
聞こえのよい言葉で人を欺き、権力に取り入り、平然と盗む。
命じられさえすれば、人命を奪うことにも躊躇がない。



彼の雇用主たちは、誰一人として彼の口から本心を聞いたことがないという。