Eno.377 ガウラ

■ 無題

僕は生きてた。

最初に拾った便箋に書いてあった通り、7日の後に本当に助けの船が来た。

木を切って道具を作り、捕らえた魚や動物を捌き、雨水や海水を汲んで生きてきた。
7日の間、昨日と同じ今日を生きるなんてことは無かった。明日にはどうなるかなんて分からなかった。

これからは違う。
正直、僕が何者でどんなことをしてたか思い出せない。
けれど、ひどく退屈でつまらない人生だったような気はする。

戻ってしまえばこんな経験は二度とできないと思う。
明日の心配をすることは無くなるけど、味気ない貧相な日々がずっと続いていく。

この島のことを忘れたくないな。
作った道具と拾ったものはいくつか詰め込んだ。帰ったら部屋に飾ろうと思う。

後はこれを書き終えたら、余った便箋とボトルで『後に来る人たち』にメッセージを残して流しておこう。


『"いつか、此処に流れ着いた貴方へ"』――