Eno.403 久木沢 杏子

■ 遭難後記

遭難から8日目
様々な事を体験しながらも生存できた私達は
通り掛かった船が見つけてくれたことで
無人の島を脱出する事ができました

無断欠勤というか行方不明になっていた件
会社ではどうなっているのか……
大方私が勝手にいなくなったとかになってそうだけど
警察の厄介になったとかの方が何か言われるかもしれない
ていうかこうしていた間の記録もないし
好き勝手に言われたり捏造されたりしそうだなあ


そこまで書いたところでボールペンを起き
波音に体を委ねながら海風に身を晒す


久々の、永らく忘れていたような清々しい心地

船員の人にねだってパンを一枚わけてもらう
そして洗い流した葉で包んだ最後の焼きサメ肉
少し炙り直してパンで挟んで一噛み
味気はないけど、心地よい味

いのちは美味しい
ありがとう、サメ
よく考えたらキミらの方が怖かったなあ


「――――仕事やーめよ」


変な自信を獲得