Eno.442 スフラ

■ 子供のおはなし

少しの間の、長い冒険は今日で終わりです。みんなが過ごした小屋や、生きものの石像、色んな事がきっと、今日までのまま沈んでいくのでしょう。

生きものさんたちや、ブックエンドは何処に帰っていくのでしょう。わからないけれど、潮がいつかまた引き、この島が浮かぶように。
きっとまた何処かで会える…かも。

何にしたって、みんな元気でありますように。


さあ、子供たちは帰るべきところへ帰りましょう!
孤児院に帰るまでが、きっとこの、ちょっぴり大変で楽しい、大とは言わずとも中くらいはあった冒険でした。











帰ったところで、きっと誰も迎えに来ない。
行方知らずになった孤児への扱いなんて、そんなものだ。
それが疎まれていたなら尚。

たぶん、本当は帰ることではなく、沈み行けば、何処にあったかもう分からなくなるこの島のようになることを願われていた。

それでも帰る場所は、そこだった。
そうと決められていたなら、子供はそこへ歩く。

「めー」



子供は誰も迎えにこない事を理解している。
数日居なくなったところで何かがとっくに変わる訳では無いことも。

そう言われたから、そうなのだ。
諦められたから、諦められているだけ。

「むえ…」




そして隣で手を繋ぐ少年がいる限り、共に帰り続ける事も、理解している。
帰る場所がたとえ無くなったとしても。

子供の世界は、小さな島のようなそれには、海に去っていく何かを追えたりはしない。
ただ此処にあった事をきっとずっと、変わらずに覚えているだけ。

「きー」



島にあった、それだけの事。