Eno.2 アキノキ

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「僕は、何者にもなりたくなかった」



硝子一枚隔てた先に映るは、仲睦まじい人々の群れ。
手繋ぎ歩く子供と大人、杖突き佇む老夫婦。
普通と呼ばれるそれぞれが、二色の瞳に目映かった。

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アキノキは虹彩異色の猫である。
自称する時は『ネコちゃん』としか言わないし、見た目は茶トラだ。
少なくとも同じ島に置いておく位なら無害であろう。