Eno.125 仔間長 梓

■ 漂流1日目?

私たち、會南中学校修学旅行B班は予定していた
クルージングの最中に海難事故に見舞われた。

幸い私は無人島に漂着したが、残りの班員の姿は
見つからない。私だけでなく4人もの漂流者が
訪れている辺り、この島には海流が向いていると
考えて良いだろう。翻ってそれは自力での脱出が
困難とも取れるが。

(そんな島で班員の姿が見つからないということは
……いや、考えるのは良そう。外れていて欲しいし)


私が早々にのたれ死んでいないのは先人がボトルに
詰めて残してくれた手記があったからだ。私も倣って
後人のために記録を残しておこうと思い筆を執った。

「しかし漂着した紙を乾かして灰を溶いたインクで
 文字を綴るなんて、宛らデュマかベルヌの小説か?
 私は中学2年生だが、2の後に着くのが年間でも
 万里でも今は不吉になりそうだ」
「大したことではないが、自称進学校の所属だから
 修学旅行は2年生時点で行く。3年生になったら
 受験勉強が優先だからな」


漂流者は合計5人、私『仔間長 梓』と年上らしい
男子『紅井 紘』、猫? みたいな印象の『ラート』と
『フェリ』、成人済みと思しい女性『睦月 沙那』。

「この情報要るか? ラートとフェリに関しては
 馬鹿正直に獣人っぽいとは書けないしな……。
 流されておかしくなった狂人の戯言に見える」


結局の所、漂流したばかりで私は頭が整理できて
いないらしいということが整理できた。そもそも
今日は本当に漂流1日目か? 昨晩をカウントする
べきなのだろうか。自信がないので便宜上1日目と
定めておく。

今日はこれで筆を置こう。今後書く余裕があるかすら
不透明な中、これが最後の手記にならないことを願う。