Eno.256 ブックエンド

■ DAY1/AM10:00-行動記録

ブックエンドは困っていた。
マスターが通信可能範囲に存在しないのだ。

仕方がないので優先度最下位フローである『周辺探索』を行っていると、
ブックエンドはとあるボトルメッセージを見つける。
そこには、このように書かれていた。

"いつか、此処に流れ着いた貴方へ"

どうやらブックエンドは絶海の孤島に漂着したらしい。
しかしそれは、彼女にとって良くない状況だった。

彼女にはマスター、ひいては人間社会に奉仕する使命がある。
一刻も早くこのシマを脱出し、マスターの元に戻らなければならない。

その為にまず、安定した活動環境を作る必要が有った。

(tips:ブックエンドの適切な動作には23A/1日の熱エネルギーが必要である。
    しかし最新鋭(※)発売当時のヒューマノイドボディを使用しているため、
    太陽光と定期的な摂食による能動的なエネルギー生成を可能としている。)

ブックエンドはサバイバル環境における奉仕活動には適していないが、
レシピとしてデータベースに登録したものは作ることができる。

「即席ナイフを作成します...」

「ピピー。『即席ナイフ』は包丁として登録されていない為、料理を作ることができません」


「『即席ナイフ』の登録名を、『即席包丁』に変更します」



ブックエンドは臨機応変な対応に優れる、優秀な家政婦ロボットだった。

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ブックエンドは家政婦ロボットである。
人間社会への奉仕を目的として製造された彼女が見つけたのは……。









ここは無人島のようだった。



(タライを分けてくれる)





しかし彼らは優しかった。



ブックエンドは彼らと緩やかな協力体制を取ることにした。
このシマを脱出するための、奇妙なサバイバル生活が始まる。


…………。
……。


砂浜に、ふたりの人影。ヒトの子供のように見える。
ブックエンドが彼らに出会うには、まだ運命力が足りない……。