■ 虎娘漂着
ヴゥ…
晴天の下、海岸へと流れついた少女は尻尾を垂らし小さく唸り声を上げる
波打ち際に浮かぶ無残な木片は想定外の長旅に耐えここまで運んでくれた大切な旅の仲間の成れの果てだ。
視界に広がる水平線の遥か先で木を切り倒し作り上げた思い出を噛みしめるように目を閉じ、暫し黙祷した
気が済んだのか、顔を上げ周囲を確認してみる
海岸沿いに複数人の足跡、そしてヒトの香りが僅かに風で運ばれてきた
もしこの場所が旅の目的地だとしたら、いずれは会う必要があるだろう。
しかし相手が友好的でない場合もある
そして何より、今最も優先すべきは自身の生命維持だ。
行動指針を決めた少女はもう一度だけ振り返り、木片たちを眺めた後
ヒトの気配から遠ざかりながら、慣れた足取りで森林地帯へと消えていった