Eno.331 アイジロ

■ 0 どうして俺は流されたのか

 

がけ崩れだったか、地震だったか
手つかずの洞窟が見つかったので調べてほしい。
それが今回の依頼だった。
発光性の植物で仄明るく、ところどころに泉の湧いている、
自然の清い魔力に満ちた、なんというか、目に見えないものに愛されている場所だった。
パワースポットとして観光地にすべきか、聖地としてそっとしておくべきか。
なんて考えながら水質もあわせて調査していた。順調だと、思っていた。

一番奥は大きくひらけていて、これまでのものより断然大きな湖。
他に道は無いようだったからここがどこかに通じてないかだけ確認したら報告に戻ろう。
魔物がいた場合の武器と空気のある場所に出たときのためのいくつかだけを防水布にくるんで、水中呼吸と灯しの魔法を唱えて冷たい水の中に入っていった。
ーーところまではおかしいところはなかった気がする。


水流を感じて、面倒なやつかもしれない。そう思ったときに少し先に行くように仕込んでいた灯りが消える。
魔封じ?かき消すほどの何かがいる?
ナイフを取り出す前に流れが激しくなる。
魔法が使えても自然の前には人間なんてちいさなもの
ひとりもみくちゃにぐるぐるになって、俺は意識を失った。



そこで死んでいてもおかしくなかった、気もするが
どうやら俺は、世界を跨いでしまったようだ

オレの世界では『何が起きてもおかしくない』から流れ着くヤツとかもいたけど俺が外に流されるとは、本当にわからないものだ