Eno.406 謎の美少女A

■ 無題

どうやら私は遭難者になってしまったらしい。
ここは確かに絶海の孤島だ。四方は海に囲まれ、水平線の先に陸地らしきものは見えない。
ただ、孤島ではあっても無人島ではないようだ。森の中にまだ新しいテントがあった。急ごしらえといった雰囲気の簡易的なものだ。
僥倖でもあるし、不幸でもある。ここが魑魅魍魎どもの跋扈する監獄島でないことを祈るばかりだ。

目が覚めた時点で手元にあったものはスマホ、制服のジャージ、ナイフ、スケッチブックだけで、財布や筆記用具は鞄ごとなくなっていた。
充電する手段がない以上、なるべくバッテリーを消耗させないよう使用は最低限に留めなければならない。状況の整理と精神の安定のために記録をつけるのはまあ必要最低限としても、絵を描くのはバッテリーの無駄遣いになってしまう。
せめて炭か何かでもあれば、絵を描いて暇を潰せるのだが……