■ なにかの足跡
船には様々な生き物がいる。
野菜に付いて芋虫が、穀物を齧りに鼠が、
それを獲る為の猫、その毛皮に潜むノミやシラミ。
招く招かざるに関わらず、船には人以外の無数の生き物が住み、また暮らしていた。
この群もその中の一つ。
呼ばれもしないのに入り込み、自覚もないまま船に揺られ、
新天地にたどり着く筈だった。
難破した船から逃れ、木箱に入って波に揺られて
陸地に辿り着いたのは僥倖という他ない。
それらは遭難したことも、もしかしたら船に乗ったことも理解していないまま、
とにかくも生き抜くために行動を始める。
無数の足跡が、砂浜に残っている。