Eno.83 なにかの群

■ なにかの足跡

船には様々な生き物がいる。
野菜に付いて芋虫が、穀物を齧りに鼠が、
それを獲る為の猫、その毛皮に潜むノミやシラミ。
招く招かざるに関わらず、船には人以外の無数の生き物が住み、また暮らしていた。

この群もその中の一つ。
呼ばれもしないのに入り込み、自覚もないまま船に揺られ、
新天地にたどり着く筈だった。

難破した船から逃れ、木箱に入って波に揺られて
陸地に辿り着いたのは僥倖という他ない。

それらは遭難したことも、もしかしたら船に乗ったことも理解していないまま、
とにかくも生き抜くために行動を始める。

無数の足跡が、砂浜に残っている。