■ 1日目

船が嵐に巻き込まれた時には死んだかと思ったから命あっての物種と言うべきか、俺は幸か不幸かこうして島に流れ着き生きている。
積み荷も流されちまった以上帰った後を考えたら俺の処分はどうなることやらと、思わなくはない。いや、今この瞬間にも嫌な想像はしている。
しかし、ここから出て帰ることが出来るという幸運な想像の上に成り立つ状況だと思えば、とりあえず今は置いておいて良いだろう。助からない保証も、助かる保証も別にどちらもない。

他の漂流者達の様子を見れば、とりあえず危険そうな奴はいなさそうなのが幸いだった。過激な輩がいたらたまったものではない、手持ちにあるナイフは自衛用ではなく作業用の物だから自衛にもなりゃしない。
1人だったら嫌な想像ばかりして気が滅入ったかもしれないが言葉でなやり取りが普通に出来る人間ばかりだった、どうにも安直な言葉選びになるが1人ではないって案外心強い物なのかもしれない。
運び屋を始めてから1人の時間なんて物も殆どなかったからだろうか。運び屋はどんな世の中でも多忙なもので、危険な海上であっても仕事は減らない、だが船の上にはいつも人がいた。

とりあえずその時と同じ様に程よく人の手も借りつつ行動すればきっと好転するはず。
そう考えよう。
今は何も分かってない状況だから。