Eno.223 九尾のキメラ『シャハル』

■ サバイバルかくありて

眠って起きて、すっかり体力は回復しました。
元気に島を駆けまわるキメラの姿がよく見えます。
だけどキメラだってお腹もすけば喉も乾きます。
特にあのキメラは身体が大きくて、消耗も激しいのです。

それでも頭はヒトのそれとあんまり遜色ありません、
だから色々な道具を組み合わせてあれやこれやと作っているようでした。
そうして、やっと海水を真水に変えられるようになったのです。

それからもあちこち駆けまわって、何かできないか、
何かやれることはないかと探し回ったようでした。
喉が渇いた人にお水を作ってあげる事はできますから、
キメラはそうしました。1回目で要領を掴めたので、
2回目はたくさんたくさんつくって、優しい人達にあげました。

キメラはとっても嬉しそうでした。
それはそうです、キメラは人が大好きでした。
特に、優しい人は優しいので、いっぱいいっぱい好きでしたから、
その人たちの助けになれてとっても嬉しかったのです。

しかし、この島はキメラのごはんやのみものを自動で出してはくれません。
前に住んでいた狭くて真っ白な四角い箱とは違うのです。
翼が折れた今、いつものように海に飛び込んで魚をまとめて獲ったり、
空飛ぶ鳥を捕まえて齧ったりも出来ません。

だから、キメラは少し疲れてしまいました。
雨のお陰で暑くはありませんでしたが、
体中がもうつかれた、と言っています。
くったりと森の中で座り込むと、空を見上げて、クオーン、と鳴くのでした。