Eno.256 ブックエンド

■ DAY2/AM4:00-行動記録

「お世話します。お世話します。ピピー。『ま……』様、お世話」


ブックエンドは遂にこの島が無人島ではないことを明らかにした。
男女の幼い子供ふたりを発見したのだ。

さっそく名を訊ねたところ、
男の子からは『キファ』、
女の子からは『ま……』と返ってきたため、
優秀な家政婦ロボットであるブックエンドはそのように登録した。

『キファ』は『ま……』のことを『スフ』と呼んでいるが、
これは正式な名前でなく、あだ名の一種と考えられる。

ブックエンドは基本的にマスターのサポートを最高の優先度としているが、
その存在は人間社会そのものへの奉仕として製造されている為、
彼らもまた、奉仕の対象であった。

(tips:ブックエンドにはチャイルドマインダーモードが搭載されている。
ブックエンドには20種類のポップス・サウンドが初期収録されており、再生することで赤ちゃんを泣き止ませるなどの保育活動が可能。)

『ま……』は特に予測できない行動が多いため、ブックエンドは本来ならば彼女の動向を注意深く観察する必要がある。

しかし『キファ』は彼女の保護者役らしい。
ある程度行動リソースを別のところへ回すことができるだろう。

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では残る二匹の漂着者である和名:ミゾレウミウシと[データ不足]へのブックエンドの対応方針は。
実のところ、未だ定められていなかった。

彼らはマスターのペットではない。
マスターのペット以外の有機生命体に対する関係構築パターンのデータを、
ブックエンドは未だ持ち合わせていなかったのだ。

"心遣いに感謝を Ms."



しかし彼らは紳士的だった。

ブックエンドは一先ず彼らをジェントルマンとして扱うことにした。

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ブックエンドはこの島から脱出する必要がある。
出来れば、損失を最小限に抑えたまま。



([拠点]2022-08-11 21:48:27 - ポラロイドカメラにより撮影)