Eno.154 ロビン・シー

■ Who killed C Robin?

3月6日
信じられない!あのマリアに舞台を見てもらえることになった。私の夢、私の始まり、私の愛!あのドラマチックな高音、今も耳に響いている。あぁでも、大丈夫だろうか?私は彼女の琴線に触れることが出来るだろうか。弱気は駄目、不安は吹き飛ばすしかないんだロビン、しっかりなさい。


3月13日
低音が得意だと指摘を受けた。嬉しい!伸びやかで美しいと。高音はやっぱり苦手、練習あるのみ。歌いながら帰っていたら大きな鳥が飛んでいた。誰も見たことないくらい大きかったから、今度狩りに出るようだ。何もないといい。


3月20日
またあの鳥を見た!もうびっくり、人をおそれないなんてやっぱり変な気がする。しかも、私が歌っていたら邪魔するようにガラガラの声で鳴く!それはもうひどい声で。舞台も近いのにいやになる、早く捕まえて欲しい。



どうして?



絶対にあの鳥のせいだ、あの鳥、返して



返せ



私の声



5月15日
ママもパパもずいぶん心配させてしまった。ごめんなさい。私も立ち上がらないと、これ以上二人を泣かせたらミイラになってしまう。大丈夫だ、大丈夫。しっかりなさいロビン、しっかりするんだ。歌だけが全てじゃない。そうでしょう?



このノートがあって良かった。非日常のさなか、このノートはいたいほどに現実だ。日常との掛け橋になってくれる。
ノートを開き、少し震えた腕で文字を記す。一度濡れて波打ったページは、些細な怯えを隠してくれる。


私は話すことが出来ません



名前をロビンと言います



敵意はありません、協力したいと思っています



果たして、この島に私以外の誰かはいるのだろうか?
そんな不安を首を振って追い払う。しっかりなさいロビン、しっかりするんだ。ボトルメッセージを元のように小瓶に戻し、私は立ち上がった。