Eno.155 Иван А. Гладский

■ 独りぼっちの青年

――本当に、僕のしてきたことは正しかったのだろうか?

一つの大きな仕事をしくじった帰り道で、青年はずっと迷っていた。
このコミュニティに所属してから3年弱、今まで自身の業務に疑問を抱くことは欠片もなかったが……今回の、彼にとって初めての失敗が残した傷跡はあまりにも大きく、深かった。

人に寄り添い生きようと必死なイキモノの在り様と、過去の仕事の裏で自分が無視してきたであろうモノと。
それらを踏まえて青年は、組織が抱える思想の異常さを理解してしまったのだ。

――この先、どうしようか。

帰路につきながら青年は考えた。両親も妹もいないいま、あの組織以外に自分と社会を結ぶものはない。その繋がりにもついていけそうになくなった今、完全に自分は宙に浮いている。
戻ったところで自分が耐えきれないのは目に見えているし、そもそも業務をしくじった時点で何らかの処罰も下されるだろう。
となれば、自分がとるべき選択は必然的に限られる。

地元の土を踏んですぐ、青年は海を目指した。
穏やかな海原は見ているだけでも心を落ち着かせるものではあるが、彼の目的はそこではない。

「よし……いこうか」



その呟きをさいごに青年は海に飛び込んでいった。厚手の服装に加え、重量のある装備品もいくつか携えたまま。
海水に全身を浸し、青年はゆっくりと目を閉じる。小さな人影は海原に飲まれ、青年は――

――青年は、砂浜に打ち上げられた状態で目を覚ました。