Eno.433 若葉博士

■ 記録004

ここに居る人間……いや、知的生命体同士が各々役割を持ち始め、その結果食料や飲料が上手く融通し合えるようになってきている。

驚くべきことだ。

それに伴って、かなりギリギリで生き延びていた当初と違い、少し余裕も出てきた。
前回のログに書き忘れたが、雨が降って皆が雨水を飲めたことも大きいだろう。

少しこの島について触れよう。

やはりこの島は、時空間異常としての性質があるようだ。

異形の存在が居るということから考えられた次元的な重なり合わせだったが、それは常に起こり続けているように思える。

具体的には……これは明確ではないが、過去に起こった出来事を知覚出来る点だ。

全てがはっきりと分かるわけではないが……そうだな、あたかも自分の記憶を思い返すように、この場所で起こったことを思い返せる。

この島で殺人や暴力、奪い合いや騙し合いが起こらないのはこの現象のせいかもしれない。

……この島で嘘をつくことは不可能だ。 何かを隠すことも不可能だろう。