Eno.170 アルザス・リースリング

■ シーエルフの海流れ

…………どうしてこうなった。

俺たち避暑のために冒険者の仲間の皆と北海地方の海へと帰ってきていた。
俺たちのパーティ、カモメの翼はかなり名の知れた冒険者だ。色々あったが今はそのあたりは割愛する。

俺たちは死ぬほど暑さが苦手だ。この死ぬほどは比喩ではなくガチだ。
そんなこんなで俺たちの故郷、北海地方へと帰ってきていて俺は海で泳いでいたわけだ。
シーエルフにとって泳ぐことは人間にとっての軽い運動みたいなものだ。ほら、趣味やちょっと鍛えるためにランニングするやつがいるだろ?あんな感じ。
陸で暮らしても特に支障はないが、やはり海に帰ると童心に帰るというか、本能のままに泳ぎたくなるというか。ちょっとはしゃいでいたっていう自覚は確かにあった。

……そう、泳いでいたんだ。
泳いでいたんだよ。

だって、シーエルフだろ?
故郷に帰ってきて、思い出の海があったなら泳ぐだろう?
そうだよ、何もおかしいことなんてしていなかった。
ちょっと……はしゃぎすぎた、たったそれだけなんだよ。


……そうして、俺は……

気が付いたら……遭難していた…………