Eno.406 謎の美少女A

■ 無題

小屋を建てて、探索をして、食糧を集めて……ようやくそれなりに動けるようになった。
一時は本当に死の淵が見えるくらいの状況だったけど、どうにか持ち直せたのは運がよかった。誰かがお風呂を作ってくれたおかげで清潔さが保てるし、気分も良くなった。

お風呂を作ったのはローレンツカか、あるいは他の漂着者だろう。作った人には礼を言わなければならない。
ひとりで生き抜くのが厳しいことは初日に悟ったので、他の漂着者ともコンタクトを取る必要がある。寝床とお風呂は確保できたから、あとは十分な食糧と水を安定して確保できるラインを整えればいい。

手持ちの食糧は魚と貝ばかりだけど、食糧に困窮している人がいれば援助するついでに協力体制を組めるかもしれない。
まず手助けをする意思がある、という姿勢を示してから提案するのが最善手だろう。相手に信頼に足る人物だと思わせれば交渉はスムーズになる。

サバイバル生活にも希望が見えてきて、風景のスケッチをする余裕もできた。この島は未開の孤島なだけあって眺めは素晴らしい。海辺と森くらいしか描くものはないけれど……まあ風光明媚なだけましだと考えよう。
飽きたら人物のスケッチに切り替えればいい。被写体は幾人かいるだろうし、協力のついでに撮影許可も得るとしよう。
探索中に拾ったポラロイドカメラもあるし、しばらくはスマホの充電を気にすることなく写真を撮れそうだ。スケッチとは別に記念写真を持ち帰るのもいいかもしれない。

最悪な遭難生活だと思っていたけど、土産話を持ち帰れると思えばメリットもある。兄さん、喜んでくれるかな?