Eno.179 チック

■ プロローグ

「…………エーン……」


島のとある浜辺、流れ着いたハーピーはすすり泣いていた。

なんでこんなことに。思いながら記憶をたぐり寄せる。



いつもと変わらない日。調達した食べ物を持って、
陸と陸のあいだ……海の上空を飛んで、私たちの家に帰る途中。


突然、後ろから物凄い轟音に襲われた。


もともと些細なことにもびっくりしてしまう性格なため、
長く飛行する日は天気などの状態に気を付けていた。
今日は何も問題はないはず……だった。

何が起きたの?耳が痛い。知らない音。どこから?
怖い。どうしよう。怖いよ、お姉ちゃん……!
えっと、まず、振り向いて確認…………あれ?


そういえば、いま、飛んで―――


海に落ちる衝撃を最後に、記憶は途切れている。

「………のど、かわいたな……」


怖いけど、ずっとこのままでもいられない。

震える身体を奮い立たせて、歩き出した。