Eno.121 エルミナ=エルマ・エルミウム

■ 私が筆を執る理由

筆記用具を持ってきていて、正解でした。
こういう心の内側は、抱えておくよりどこかに出す方が健全です。
ですがこういうことは、皆様に相談などとてもできません。
私だけが、抱えておけばよいのです。
ですから、こうしてノートにしたためるのです。


私は、見たくないだけかもしれません。
ここに来るに至った、あの出来事を。
今は目の前のことしか頭にないので、忘れていられるけれど、
いつしかそれに、向き合わねばならないときが来るのだと思うと、
正直とても、恐ろしいのです。

お風呂に入っていたときに、そんな自分に気付いてしまいました。
あまりの心地よさに気が緩んでしまったのもあったのでしょう。迂闊でした。
皆様に心配をかけるようなことは、したくなかったのに。

今は、この島から生きて脱出すること。
それを考えるので精いっぱいなので、他のことを考える余裕はありません。
ですが、今の状況から脱せたとき、
あるいはお風呂に入ったあのときのように、再びあのことが心の内側に巣食ったとき、
私は正気を保っていられるでしょうか。
ちゃんと足で立って、乗り越えられるでしょうか。



家族の後を追おうとせず、留まっていられるでしょうか。