Eno.186 幻夢の囚われ少年

■ 少年の記憶──03(2DAY)

 

「タネ、どこに植えるのがよさげだー?」


"次"の為にぶどうの行く末を託された少年は、小さなタネを手にあっち行ったりこっち行ったり『ゆうれい島』を探検中。
それほど大きな島ではないようで、ぐるりと外周を回るのは少年の足でもそんなに苦ではないようだ。
とはいえ、まだ隅々まで調べつくせているわけではないから歩きっぱなしで空腹は増し疲労はたまっていくばかり。

赤い木の実をとりだし半分齧る。しゃくり、と。

甘い口中香が鼻腔に届き、真っ赤な果汁が少年の指を濡らす。
赤い。赤い。まっかな──…


「…──血みたいだな……」


無意識にぽつりと漏れる。
血に濡れた己の手。いつかどこかで見たような、そんな既視感が唐突に脳裏を襲う。

アレは誰の血だっただろうか。誰かを傷つけるような愚行を犯した覚えはないけれど。
──いいや、相応の理由と信念、その覚悟があれば犯すこともあるかもしれない。

でも、コレはきっと違う。と薄雲の中の記憶が否定する。

「オレ、の……?」


──…ズキズキ…──

あたまが、いたい……あた、ま……?
あれ?ちがうな。痛いのは頭じゃない。ここは──…