Eno.249 今田

■ 2


犬?

気付かれてしまったか。
俺は犬に見つからないため、特に匂いを遮断するよう心がけていたが......この島は小さすぎるから仕方ない。気付かれるのも時間の問題だろう。そろそろ別の場所にこもるべきかもしれない。
警戒してナイフを強く握り締めた。

犬は近くの石ころの上に焼いた小魚を置いていた。正直、小魚を焼くのは木材がもったいない。砂浜の人達は贅沢だな。
わざと魚を無視していたが、犬はしばらくその場にいただけで去っていった。俺のために置いてくれたらしい。
賢い犬だ。
うん……
とりあえずとっておこう。




さっき魚が置かれていたところにボロボロのアヒルのおもちゃを置いた。
「おとり」として── 字面的には「贈り物」というべきかもしれない。
あのおもちゃはもうアヒルとは思えないほどへこんでいたが、どうせ犬はこれを噛んで遊ぶのが好きなんだろう。

犬を手懐けておくといざというときは便利だ。……しかし、この犬はちょっと賢すぎる。