Eno.433 若葉博士

■ 記録006

[罵倒]なんてこった、晴れてる!

私自身の考えの甘さを思い知った……昔からそうだな。

「若葉君。あなたはいつもそうね、『そうであってほしい』という願望にすぐ流される。」

「現実世界に『ストーリー』は無いの、現実は無感情、結果だけが淡々と示される。」

希望的観測は、自分だけでなく他人も危険に晒す。だからこそ私は、重要な仕事を任せられず、閑職に追いやられていたというのに……。



恐竜型生物の集団は、食料、水、燃料の役割分担が完成したように見えた。
区別のために、私は色名で呼び分けることにする。

巨大人間型実体や半人間型実体達の協力もあり、拠点はうまく稼働しているように見える。
彷徨い歩いている人物が助けを求めてきても、積極的に助けられるだろう。


それに、さらに良い知らせもある。


朝、死にかけていた人物が、ゆっくり休めてかなり回復したようだ。
……死を覚悟していたようだった。しかし、皆の協力で死の淵から戻ってきた。

非常に良い事だ。「自分の尽力で、誰かが助かった」これが目に見えると士気が高まる。


ただ気がかりも出来た。

ヴェロキラプトルの一匹が咥えて持ってきた物品だが、ナイフや火打ち石等の必需品が混じっていたようだ。

一体どこから持ってきたんだ……? もしかすると、その持ち主はもう……。