■ 端書1
生きていれば良い、とそれだけに問題を注力し暮らすと言うのはひどく簡単で難しい。
一見矛盾しているようにみえるだろう、然し間違いではない話の筈だ。
そう言う意味ではこの島に流れ着き生存を目的にして行動すると言うのは――余計な事も考えずに済む分気軽なのかもしれない。
……寄る辺ないことや貧しさに喘ぐことは不運ではなく、何ぞに強制される生き方と死に方を掴まされるよりかは僥倖だ。
だから飼い殺しにあって売られることも口減らしにされることもなく、自らの意思で生きていけるのならば。 それは。
「……そう、言えるのは今だけだろう」
そう。この考え方は怠惰であり俺が尤も忌み嫌うものだ。
確かに死ななければ安いと、最低限の拙い安寧に身を任せることは簡単だ。然し"死なないだけ"の行いは果たして生きていると言えるのだろうか?
俺はそこに否を置く。
死なない為だけに全てを切り捨てるのは、息をした死体に他ならないからだ。
だから俺に渦巻く炎は、衰えを見せないのだろう。嘗ての裏切者を俺は許していない。
……なんて事を、考えずに済むのは。少しだけ気軽だったんだ。