Eno.190 贖罪のインディゴ

■ DAY 2



今日も雨が降った。

木の葉をつたって、湿った森の土の上まで水滴が落ちてくる。
私はぐじゅぐじゅの泥水をすくうのをやめた。


雨が降ったら、私は森を出る。

波の届かない砂浜にこれまで集めたありったけの器をたくさん並べて、
びしょぬれの雨だらけになって遊ぶことに決めてるの。


きれいな貝や石を探してみたり、カニが作った穴をほじくり返したり、
並べた器をまあるく円に置き直して、そのまんなかで踊ってみたり。

足の裏が擦りきれるまで遊んだら、濡れて重くなったワンピースを絞る。
それで、ちょっと繊維のにおいがする雨水を飲む。


「明日も雨が降りますように」



そしたら、最後に、雨乞いをする。
これで私の楽しいなんちゃって儀式ごっこはおしまい。






この島にたどり着く前、私は小さな船の上にいた。
最果てをめざして船をこいだり、波にまかせて休んだりしながら。
そのときから、持ち物は懐中時計と日記と手鏡のかけらだけ。

大事な日記は最初の40ページぐらいしか書かれていないけど、
いまさらなにかを書き足すきもちにはなれないな。
この島ではいろいろなことを考えてしまうから、
この日記を読み返して私の汚れた心を洗うことにした。

ここでの暮らしはちょっと楽しい。
最果てに行きたくなくなっちゃったらどうしよう。


「──じゃあ、どうするの?
 この島にはずっといられないのに」


迷いが生まれたら、鏡を見る。
私の中で決まっている大事なルール。









鏡に映る私がこっちを見てる。
なんだかちょっと責められてるみたい。