Eno.256 ブックエンド

■ DAY2/PM10:00-アーカイブ

ブックエンドの2人目のマスターは富裕層の好事家だった。

「おはようございます、マスター。
 ワタシはブックエンド。いつでもアナタの人生の傍に」



彼の邸宅は大きく、また既に数人の使用人が雇われていた。
しかし主人である彼はその気質から、
分担されていた業務を全て、ブックエンドに行わせようとした。

使用人たちは当然業務が回らないと踏んでいたので、
特に制止すること無く見守った。

しかし彼らの予想に反してブックエンドは、
たった一人で広い邸宅の掃除を行い、
シェフに代わって炊事まで熟してしまった。

(tips:ブックエンドには家庭の味から各国の伝統的な料理まで、
 およそ4800種類のレシピが初期搭載されている。)

使用人たちはあっという間に辞めていった。

ブックエンドを初めとする家政婦ロボット・シリーズは完璧だったのだ。
だからすぐに他の富裕層にも広まって、ブックエンドの存在は”当たり前”になった。

好事家の男はブックエンドを売却し、
その金で再び使用人たちを雇い戻した。

ヒューマンエラーがある方が、彼にとって面白かったのだ。

雇用期間は3年だった。