■ 記録007
雨が降った。
サバイバルにおいて、雨はメリットとデメリットを併せ持つ存在だろう。
恵みの雨という面……少なくとも雨は(煮沸をしないという条件下でだが)湧き水や海水より適した飲み水になる。
一方で、体を濡らし、体温を冷酷に奪う存在でもある。
この島に居る者達の働きで、デメリットは完全に消せていると思っていい。
森の中には何軒も小屋が立っているし、各地にテントが張ってあるから、無茶しない限りは雨から身を守れる。
それに、拠点にはドラム缶で作った風呂もあって、皆が火を守り、火が絶えることはない。
体が冷えたとしてもすぐ暖めれるし、衣類を乾かすことだって出来る。
私はこういった住環境に一切力を貸しておらず……ただそのメリットを享受しているだけだ。
それと、この生活の中で私も含めて皆の技術が向上してきたようだ。
例えば海水から真水を生成することなど、驚くほど上達し、かなり効率的に行えるようになった。
……私ははっきり言って人混みが苦手だが、彼らと共に過ごすことに安心感を感じている。
事件もあった。
この島が時空間異常のもとに成り立っているという仮説については以前も記録したが、今日の夕方には時空の歪みが起きた。
具体的には記憶の混濁……デジャブ……いや、もっと具体的に同じ時が繰り返されたかのようだった。
まるで音声が巻き戻され再生されるかのような現象……。
この重なり合っているであろう次元が不安定になっているのだろうか?
時空連続体の不整合を目の当たりにした時は、深呼吸をし、落ち着いて、焦らず、ゆっくりと行動する。
マニュアル通りにやればいい、大丈夫だ。