Eno.38 白恋たると

■ 人魚姫の歌

 

「………… ……♪」



辺り一面がしんと静まり返って、もうだいぶ夜明けが近い頃に。

誰かの腕……ではなく、
寝床からは少し離れた、海沿いの岩に腰掛けて小さな声で歌った。

誰も聞いたことの無い、ワルツのような哀しい旋律。
泡になって消えてしまう人魚姫の歌。

誰に向けて歌っているのかは、自分でも判らなかった。