Eno.96 プラシオ

■ かんがえごと

 
 
どうして生きているのかわからなかった。


栄養も水分もいらない、髪も爪も伸びない。
まるで時間が止まってしまったみたいに変化の無い身体。

…それだけじゃない。
何かを変えようとしてもすぐに無かったことのようになってしまう。
傷を付けてみても、髪を切ってみても、次の瞬間には元通り。

いくら調べても原因はわからないまま、施設の大人達に「君は異常だ」なんて言われて。
刺激を避けるため…という理由で、外出も少しの娯楽も禁止。
ベッドと何に使うでもない机や椅子があるだけの空間に閉じ込められた。

1日、1週間、1ヶ月、1年……
そんな空間で、ただ無為に過ごすだけ。

…外から鍵をかけられた部屋からは、アイオとヘリオが抜け道を作ってくれるまで出られなかった。


……でも、ここは違う。自由に動ける。
栄養も水分も、この身体は吸収してくれる。



……………………。

ぼくの身体は、ぼくは、ちゃんと生きてる。
あぁ、よかった。



…………でも



でも、あの施設に帰ったら、また……