Eno.433 若葉博士

■ 記録008

冷静さを欠いて取り乱してしまった。


時空間の歪みは恐ろしいものだ。

例えば、二つの世界が一時的に重なった場所に、私が侵入したとする。
するとそれらが元に戻った時、私の右半分がA次元に、私の左半分がB次元に取り残される。

昔、私は実験中の事故でそれを目の当たりにしているから……流石にある程度慣れたとは言え、頻発すると怖くもなる。

それに何より、この一時の平穏が抵抗できない力に破壊されるというのが「嫌だ」という、明確な感傷でもある。



それと、ゴミ集めに浜辺に立ち寄った際、神秘的な光景を目撃した。
私がここに書き留めるのも憚られるような……神聖な領域。そんな情景だ。

神秘に対する科学。それは異物でしかないだろう、下手をすれば悪ですらある。

何もしなくとも、その場にいるだけで私は異物……そそくさとその場を後にした。


この島での「正常性」とは何なのだろう。



さて、話は変わる。

時々島で見かけた人物数名と、久しぶりに拠点で会った。

姿をしばらく見かけず、少し心配していたのだが、元気そうで何よりだ。

それと、朝は死にかけていた人物もすっかり元気になり、探索に出たようだ。


生存という面に於いて、全てが上手く行っているように思う。

後はこの島をどうやって出るか、ということだろう。


果たして、私たちにはどんな結末が待っているのだろうか。