■ 最悪な夢
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あの子が愛おしそうに微笑んでいる。
いつの間にか手に入れていたらしい、指輪を見つめて。
買う時間なんて無かったハズだ、登下校はずっと一緒だった。そんな物が売ってそうな店に寄り道もしていなかった。しかもオモチャの指輪じゃない、ちゃんとした、指輪。
…………だから、信じざるを得なかった。
どれだけ嘘のような話だったとしても。
吸血された事は、ただ抱き着かれただけで、寝惚けた俺の勘違いだったかもしれない────なんて、淡い期待は脆く崩れた。
「────待っててね、ご主人……ううん、ふゆるぎさん。
ㅤ必ず見つけ出すから……」
そう呟いたキミは、ここ数日SNSを食い入る様に見ていた。
(なあ、そんな訳もわからない、
ㅤお前に辿り着けていない相手なんて止めて、俺にしろよ)
…………そんな言葉は、今までに見た事が無い程の真剣な眼差しを見てしまったら、言えなくなってしまった。
だけど、でも、今ならまだ間に合うんじゃないか?
キミを押し倒して、
驚いたままのその唇を、呆気なく奪って、
そして、そのままキミを─────
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ嗚呼、それはなんて虚ろな夢幻。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ既に決して起こり得ない事象であり、
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤそして、どうやったって手に入らない結末。
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