Eno.256 ブックエンド

■ プロローグ

「おはようございます、マスター。
 ワタシはブックエンド。いつでもアナタの人生の傍に」


ブックエンドが107,359時間ぶりのスリープから目覚めると、
目の前には海が広がっていた。

(tips:ブックエンドにはIPX8ランクの防水機能が搭載。水面下でも使用できる。)

周囲を見渡せば、まっさらな浜辺と、遠くに緑の森、それから燦々と降り注ぐ白昼の光。
それから、手頃な岩場の陰があった。

ブックエンドは学習済のパターンを活用し、こう推測する。
漂着した際、偶然この岩が背中の電源ボタンに接触したのでは?

とにかく、まずブックエンドは現在位置を確認し、
彼女に登録されているマスターと連絡を取る必要があった。

しかしホームに登録された住宅は半径10km圏内に位置していないらしい。
GPSによってブックエンドの現在位置を特定しようとするも、衛星と通信が繋がらない。

「ピピー。マスターと連絡ができません」


ブックエンドは困った。