Eno.207 南波リスコ

■ 少しおもいでばなし

きのうの日記、きっこのところリスコになってる…。

慣れない日記なんて書くもんじゃないよ。

ないな。

はぁ。


ふふ。






きっこが用意したすてきなご飯と、
事件性の高い食事の、いい匂いで目が覚めた。

わたしの頭はカミサマのおなかに寄りかかっていた。


夜。
たき火を囲んで、すこし話をした。
少しずつ、安定してきた気がする。



あとは、救助を待つしかない。



この島、どこにあるんだろう。
誰か通りかかってくれるのかな。


私が遭難してるって、家族とかコーチとか、
気づいてくれてるだろうか。
すごい、今更な心配。そういや連絡手段もないな。

帰りたい。



SOSってどうやって出すんだろ。



ボクサーライセンスより、レスキューの資格でも取ればよかった?
「強くなりたい」って、そういうことじゃなかった?



きっこ、めちゃつよになりたいって言ってくれた。
カミサマは、尻尾でサメへし折れるくらいめちゃつよらしい。
わたしは……。


おなかが膨れて、すこしだけ昔のことを思い出す余裕ができた。


……。


小学生のころから、胸がおおきくて。
からかわれたり、駅でいやな目にあったりした。


だから強くなりたかった。
テレビで見た、ボクシングを習い始めた。


もし襲われても、泣き寝入りなんてしないため。

わたしがわたしのまま、胸を張って歩くために。





でも、極限状態で大切なのは、
そういう「強さ」じゃないみたいだ。


うん。
「めちゃつよ」に、ならんとな。