Eno.347 ネイハム・オーランシア

■ 遭難

遭難してしまってから早二日か三日ほど。
ようやく岩場で筆記用具を手に入れ、何かしらの覚書をすることが出来るようになった。
インクを付ける必要もなくあまり手になじまないもので使い勝手に慣れないが、仕方ない。

砦から離れて数日、ここへ流れ着いてしまって以降連絡を取ることが出来ない。
手紙を出すことが出来ないのだから当然だが、果たして向こうはどうしていることだろう。
というよりも、自分自身もどうやったらこの無人島から脱出できるのかは不明だ。

此処にはどこかで見かけたような顔の人々もいるが、そうではない人もいる。
それぞれにここへ流れ着いた経緯は違うものの、皆とにかく遭難しているのは同じのようだ。
であれば俺としては本来あるべきように彼らの助けをしたいものだけれど、
なかなか自分の命をつなぐだけで手一杯で、うまくいかない……。
どうにかして彼らの役に立つ手立てをみつけられたらいいのだが。

先日は恵みの雨も振り、乾きに苦しむことは少なくなった。
とにかく今は、食料を十分に確保し、人々に割り当てることができるようになるのが先決だろう。