■ あのね、えっとね
私も服をもらった。
こんな場所で服をもらえるなんて思わなかった。
それも手作りなんだよ。すごくかわいくてびっくりしたけど、嬉しいな。
持ち帰りたいし、ここが夢の世界じゃないといいな。
あの夢の世界のものは、持ち帰れなかったからなぁ……
……もし、私が生まれていたら
お母さんも私に服を作ってくれたかな。
なんて思ったけどお母さん、不器用だから手作りは無理かな。
こういうことはお父さんの方が上手な気がするの。
ねえ お母さん。
お母さんは男の子が欲しくて、女の子は要らなかった……ううん。
跡取りになれない女の子なんて産んでしまったら
いろんな人から失望されるって怖がってたけど
お父さん含めて皆ね、そんな人たちじゃなかったんじゃないかな。
お母さんのお腹の中にいた私は
お母さんが見て聞いて考えたことしかわからなかったけど
お母さんのお腹の中からいなくなった後で皆を見たらね
私はきっと産まれても良かったんだろうな、って思ったの。
「お母さん、私ね」
「本当はちゃんと、生まれたかったの」
「お母さんとお父さんの子どもとして、人として生まれたかった」
「そしてお母さんとお父さんみたいに、誰かと出会って恋をするの」
「でもそれはもう叶わないから、叶っちゃいけないからせめてともだちだけは――」