Eno.611 わたいぬ

■ わ た い ぬ②

わたいぬは、あまりの寒さに、目を覚ましました。
砂浜から離れようと、森林へ向かいます。

ふさふさ。かさかさ。
なんだろう?

わたいぬの、足元から、かさかさ、ふさふさ、
面白い音が広がります。
なんと森林には、落ち葉がたくさん、
落ちていますね。
わたいぬは、落ち葉を踏む音が、
大好きです。たくさん、落ち葉の道を
踏んでいたら……。

石の斧
焚き火
蒸留器

を、作れたようです。
これらの道具の作り方は、
きっと、わたいぬが見た夢が、
教えてくれたのでしょうね。

「わん!」

前足に、細いものが絡みつきます。
おどろいて、吠えてしまいましたが、
見下ろしてみると……。
こんどは、ツタを見つけたようですね。
わたいぬは、何かに使おうとしています。

かさかさ、と落ち葉を踏む音が聞こえます。
眼鏡をかけた男性、サトルがこちらに近づいてきました。
彼は、わたいぬを撫ではしませんでしたが、
バームクーヘンみたいな実を二つに割ると、片方を
わたいぬの前へと差し出してくれます。

おそるおそる、きのみを、かぶ、っと、食べました。
味は、パンのような香りで、わたいぬは驚きます。
でも、おなかが空いていたのと、美味しかったのです。

わたいぬは、あまりのうれしさに、ぴょんぴょん、と、跳ねました。