■ 雨よふりふれ、チェスの駒
依頼途中の雨なんて、たいていは良くないものだ。
急な雨に降られればうまく進めない。
馬車に乗ってても跳ねる泥は馬の機嫌を損ねる。
そんな中で見つけた雨宿りの場所が曰く付きの場所だった、
なんて冒険者には稀によくある話。
それが無人島だとこんなにありがたいとは。
できれば沸かした方が堅実だが、水の確保が容易にできる。
お釣りがくるくらい嬉しいもんだ。
今日は雨音を聞きながら、ベル中尉殿の頭にちょっと興味を持った。
彼の頭を見てると、昔はガラクタ弄りするのも好きだったな、ってことを思い出した。最近できてないけど。
ニンゲンの体の最大の発明は脳だと思ってる。
この言葉は嘘偽りない。俺が『参謀』として冒険者の席に座っていられるのは……自意識過剰な言葉に聞こえるかもしれないが、
俺が賢かったから。
冒険者としては、俺はだいぶ体力に劣る。ルーガ見たいなバカの体力は除いても。
汚れるのだって慣れはしても好きにはなれない。
冒険心のどこかで、俺の心は平穏な生活を思い描く時もある。
それでも状況を見て、考えて、生きてこれた。
そんな『頭脳』ってやつを、ベル殿の世界では機械で再現してしまうらしい。それも防水防塵、とにかく頑丈に。
羨ましくもあるが、生の頭脳と機械の頭脳、どっちがチェスに強いのか。それも気になっている。