Eno.61 碧きワダツミの兄妹

■ ~いっぽうそのころ~

――某世界、某海域付近の港街。



* * * * *



「……ジャン、これで全員かな?」

「あぁ、生存者は全員確認。
 賊共もきっちり縛りあげたから、喚く位しか出来ねぇさ」

「そうか、判ったよ。
 死者については、後で黙祷しよう」



「しっかし、遥々買い出しに来たら突発海賊討伐とはねー。
 おいら達じゃなきゃ見逃してたね」

「其の点なんだけどさ、皆ちょっと良いかい?」

「んー?
 どしたのさ、ロイ兄ちゃん」

「……結論から言うとね。
 恐らく、海賊討伐だけじゃ終わらないと思うんだ」

「どういうことだい?
 彼らが人魚達を根刮ぎ囚えていたのと関係は有るかい?」

「んー……有ると言えば有る、かなぁ」



「事情聴取で確信したんだけど……囚われてた人魚達は、この辺りでもちょっと特殊でね。
 この辺の土着信仰に詳しい者達なら絶対に手を出さないし出しちゃならない、言わば不可侵領域の存在なんだよ」

「……人魚族で、不可侵……
 其れってもしかして、“碧きワダツミの民”かい?」

「そう、ハーヴェスト君も知ってたね。
 人魚族の中でもとりわけ魔法力に優れた一派でね、此処らの土着信仰における最高神の直結の裔と呼ばれてるんだ」

「今回の海賊共が知らなかっただけじゃねーかぁ?」

「其の可能性も十分有るね……いや、だからこそ、かも。
 さっきさ、逃げようとしてて捕まえた奴居たでしょ?
 あいつは海賊と手を組んでた奴隷商人で、誰かに宛てる手紙を認めてる途中だったみたい」

「……其の宛名は?」

「名前が書きかけだったけど、本文はほぼ完成してたよ。
 其れも含めて……私としては、ちょっと調査の人手が欲しいな~って」

「成程、そういう事なら……ウィアトル、頼めるかい?」

「オッケー、おいらなら宿までひとっ飛びだもんね!」